笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 真夏の太陽の日差しがギラギラ。
 今日もすごく暑い。
 夏バテしないように、しっかり塩分補給。

 幸子さんにいただいた梅干しを食べながら、日本海沿いの国道七号線を北に向かって歩き続けて、何事もなく鳥海山を越えた。

 このまま無難に日本海沿いの道を歩いていくか。思い切って進路を変えて、内陸の道を歩いていくか。あたしとまなちゃんは静かな砂浜に座って話し合い、進路を変えて、内陸の道を歩いて青森県を目指すことになった。



 のどかな農道をのらりくらり。
 のどかな農道をのらりくらり。
 のどかな農道をのらりくらり。
 ひたすらのどかな農道をのらりくらり。
 空気は美味しいけど、刺激が全くない。

「ねえねえ、牛さん。その草って美味しいの?」
「もーもーもー」
 何を言っているのか、さっぱりわからない。牛に話し掛けても面白くもなんともない。牛糞臭いだけだ。

 旅が順調なのはいいけど、刺激がないのはつまらない。ただ歩いているだけでは何も起こらない。刺激を求めようとしても、田舎の風景が広がっているだけ。

 刺激、刺激、刺激。刺激はどこだ。あたしの脳は、とにかく刺激を欲している。



「さきさん! あそこに人が倒れてますよ!」
 まなちゃんが、突然、大きな声で叫んだ。

「あ、本当だ。人が倒れてる」

 農道脇の竹やぶの中で人が倒れている。
 仰向けのまま、ぴくりとも動かない。
 あたしは久しぶりの刺激に興奮した。

 旅のルール、その一。竹やぶには入らない。

 人を助けるためとはいえ、この竹やぶに入ってしまったら、旅は終わってしまう。人の命を取るか。旅を取るか。どうするあたし……。ここはとにかく落ち着いて、まずは生存確認。
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