笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「ソーメンを茹でてきますので、さきさんとまなさんは休んでてください」
 嬉しそうな顔で言った小早川くんは、ソーメンセットの入った袋を持って、庭を貸してくれている竹やぶの所有者のおじさん家に入っていった。
 
 ホーホケキョ♪ 待つこと二十分。

「どうもお待たせしました」
 小早川くんが笑顔で家から出てきた。

 大きなお盆の上には、竹ざるに入った大量のソーメン。
 薬味のネギと生姜とミョウガと大葉とわさびと海苔とゴマと七味唐辛子の瓶。
 麺つゆのパック。
 麦茶と氷。
 お椀と割り箸。
 なぜか、うまい棒とよっちゃんいか。

 流しソーメン大会。始まり始まり始まり。

「ええー、本日はお日柄も良く、晴天に恵まれまして、絶好の流しソーメン日和になりました。こうして流しソーメン大会を開催できたのは、地球の皆様のおかげです。大会運営本部長の僕としましては……」
 小早川くんが真面目な顔で開会の挨拶を始めた。

「堅苦しい挨拶はいいんだよ! ソーメンが伸びちまうだろ! さっさと流せよ!」
 あたしは即座にツッコミを入れた。

「どうどうどうどうどうどうどうどうどうどう。開会の挨拶はとても大事ですよ」
「う、うん」
 あたしはまなちゃんになだめられて大人しくなった。
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