笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「次は小早川くんだね」
「はい! 頑張ります!」
 やる気まんまんといった様子の小早川くんは、自らタオルで目隠しをして、両手でバットを握り締めながら、スイカに向かって歩いていった。

「やった! 僕もスイカが割れました!」
 スイカを割って、子供のように飛び跳ねながら喜んでいるピポピポ星人の小早川くん。君は本当は日本人なんだろ。何度もスイカ割りをしたことがあるんだろ。とツッコミたくなってくる。

「うりゃ! うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ!」
 あたしはバットをおもいっきり振りまくって、スイカが粉々になるまで叩き割った。

 こんなんだから、地球人は凶暴な種族だと思われてしまうのかもしれない。

 食べ物は大切にしましょう。



 割り立てほやほやのスイカを、お世話になっているおじさんにお裾分けをした。

 小早川くんとあたしとまなちゃんは縁側に座って、瑞々しいスイカに食卓塩を振りかけて食べてみた。

「日本のスイカはとっても美味しいですね。ピポピポ星のスイカと引けを取りません」
 スーパーで買ったスイカの感想を笑顔で語った小早川くんが、口をすぼめて、ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷと、スイカの種を機関銃のように飛ばしている。

 スイカの種を飛ばすのが上手なピポピポ星人の小早川くん。君はずっと日本に住んでいるんだろ。本当は秋田県民なんだろ。スイカ農家の生まれなんだろ。とツッコミたくなってくる。

「美味しいスイカをありがとう。よかったら、これを食べておくれ」
 スイカの殻を片付けていたとき、お世話になっているおじさんが、冷たい麦茶とおむすびとお新香を持ってきてくれて、「今夜はうちに泊まっていきなさい」と笑顔で言ってくれた。

 あたしとまなちゃんと小早川くんは、お世話になっているおじさんの家に泊まらせてもらうことにした。
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