笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「あたしの歌を聴いてくださいまして、どうもありがとうございました」
 全く受けなくても頭を下げてお礼を言う。人としての礼儀である。

「お、お茶を淹れてあげるから、ちょっと待っててね」
 農家のおばさんがちょっと口ごもりながら言った。あたしの歌を聴いて、動揺しているに違いない。

「はい。ご馳走になります」
 あたしは笑顔で返事をして、田んぼのあぜ道に座った。
 小川を流れる水の音がなんとも心地好い。もう一回、歌いたい気分。

「はい、緑茶だよ」
 農家のおばさんが緑茶の入った湯飲み茶碗を手渡してくれた。
 
 熱い! 熱いだろ! 火傷したらどうするんだ! もうちょっと温くなってから手渡してくれよ! などと言ってはいけない。お茶は熱いうちに飲むのがいちばんである。
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