笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 蝉の鳴き声がこだまする中、人気のない静かな林道を歩いていたとき、道端に座り込んでいる、もんぺ姿のおばあちゃんを見かけた。

 どこか具合が悪いのだろうか。もんぺ姿のおばあちゃんは、ずっとうつむいている。

「こんにちは。どうかされましたか」
 まなちゃんが腰を屈めて、もんぺ姿のおばあちゃんに優しく声を掛けた。

「散歩中に、足を挫いてしまったようでね」
 あたしとまなちゃんの存在に気づいて、顔を上げてくれたもんぺ姿のおばあちゃんは、右足首を押さえながら言った。

「それは大変ですね。救急車を呼びましょうか」
 心配そうな顔で言ったまなちゃんがポケットからスマホを取り出した。

「痛みが引けば、歩けるようになると思うから、救急車を呼ばなくても大丈夫だよ」
 もんぺ姿のおばあちゃんは笑顔で断った。

「そうですか。でも、念のために病院に行かれて、検査を受けたほうがいいと思います」
 まなちゃんが心配そうな顔で言った。

「立てるから、病院に行かなくても大丈夫だよ」
 微笑みながら言ったもんぺ姿のおばあちゃんが、両手を地面について立ち上がろうとしているので、両側から体を支えてあげて、もんぺ姿のおばあちゃんをゆっくりと立たせてあげた。

「ご親切にありがとう。あなた方は旅人なのかい?」
 もんぺ姿のおばあちゃんが笑顔で尋ねてきた。

「はい。私たちは旅人です」
 まなちゃんが笑顔で答えた。

「そうかい。親切な旅人さんと出会えて良かったよ」
 もんぺ姿のおばあちゃんは嬉しそうな顔をしている。

 親切な旅人さん。なんとも嬉しいお言葉。
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