笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～

　まなちゃんが台所に行って、料理の準備を始めた。
　
　あたしも台所に行き、食器棚からお皿とお椀とコップを取り出して、テーブルの上に並べた。

　料理は滅多にしないあたしは、かよちゃん家でも盛り付け係。

「冷蔵庫に、冷たいリンゴジュースが入っているから、よかったら、飲んでおくれ」
　和室に座って休んでいるかよちゃんが、盛り付け係のあたしに言ってくれた。

「はい。ご馳走になります」
　冷蔵庫を開けてみたら、黄色い液体の入った容器がぎっしりと詰まっていた。

　とにかくすごい量。これは全てリンゴジュースなのか。あたしは驚きながら、黄色い液体の入った容器を冷蔵庫から取り出した。

「そのリンゴジュースは、私が作ったんだよ」
　かよちゃんが嬉しそうな声で言った。

「そうなんですか。かよちゃんは、リンゴジュースが好きなんですね」
「うん。私はリンゴジュースが大好きでね」

　かよちゃんとおしゃべりをしているうちに、まなちゃんがソーメンを茹で始めた。

　盛り付け係のあたしは、黄色いリンゴジュースをコップに注ぎ入れた。

　かよちゃんの手作りのリンゴジュースは、スーパーなどで売られている市販のリンゴジュースとは違い、リンゴの粒々がたくさん入っている。見るからに美味しそうで新鮮そう。

　まなちゃんが薬味のミョウガを切っている間に、あたしはかよちゃんを台所の椅子に座らせてあげた。
　今日のお昼ご飯は、まなちゃんが茹でたソーメンと、かよちゃんの手作りのリンゴジュース。量的にはちょっと物足りないけど、本場のリンゴジュースが飲めるのは嬉しい。

「いただきます」
　あたしは真っ先に、かよちゃんの手作りのリンゴジュースを飲んでみた。

　リンゴの甘みと酸味と粒々が口の中で絶妙に混ざり合い、喉越しもすごくいい。こんなに美味しいリンゴジュースを飲んだのは、あたしは初めて。まなちゃんも、かよちゃんの手作りのリンゴジュースを美味しそうに飲んでいる。

　リンゴ♪　リンゴ♪　リンゴジュース♪　かよちゃんの手作りのリンゴジュースは最高に美味しいよ♪　おかわりは三杯までね♪　はい♪　もう一杯♪　おかわり♪　

　思わずあたしは盛り付けしんいちの歌を歌ってしまった。かよちゃんとまなちゃんがクスクス笑っている。かなり恥ずかしい。