笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「何かお手伝いすることはありませんか?」
 とっても美味しいリンゴジュースをご馳走してくれたかよちゃんに聞いてみた。

「庭の草むしりでもお願いするかな」
「わかりました」

 あたしとまなちゃんは席を立って食器を洗い、靴を履いて庭に出た。

 高齢者の一人暮らし。草むしりまで手が回らないのだと思う。庭一面に雑草が生い茂っている。

「あの大きなリンゴの樹は、いつ頃植えたんですか?」
 あたしは草をむしりながら、縁側に座っているかよちゃんに聞いてみた。

「私と夫がこの家に引っ越してきてからすぐに植えたから、四十年くらい前だよ」
 かよちゃんは笑顔で説明してくれた。

「四十年前ですか」
 まなちゃんが驚いたような顔で言った。

 あたしはリンゴに関する知識は持っていないので、四十年という年数がすごいのかどうかわからない。

 博学なまなちゃんに聞いてみたところ、リンゴの樹の寿命は、だいたい三十年くらいとのことだった。

「大切に管理されているんですね」
 まなちゃんがリンゴの樹を見つめながら言った。

「うん。大切に管理すれば、リンゴの樹も長持ちするからね」

 リンゴ栽培に詳しいかよちゃんの話によると、リンゴの収穫時期は品種によって違い、かよちゃんが大切に育てているリンゴの収穫時期は、九月の中旬頃とのこと。

 今はまだ八月の上旬なので、食べ頃になるのは、まだ一ヶ月以上もある。その頃には、あたしとまなちゃんは北海道の宗谷岬に着いていると思う。

 成長途中のリンゴを横目で見ながら、むしった草をビニール袋に詰めて、ようやく草むしりが終わった。

 真夏の炎天下の中での作業、あたしとまなちゃんのTシャツはびしょびしょになってしまった。
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