笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 お風呂から出たら、トントントントンという音が聞こえてきた。

 バスタオルで頭を拭きながら台所に行ってみたところ、かよちゃんがキュウリを切っていた。

「足は大丈夫なんですか?」
 まなちゃんが台所で料理をしているかよちゃんに尋ねた。

「大丈夫だよ。もう歩けるようになったさ」
 微笑みながら言ったかよちゃんは、包丁をまな板の上に置いて、台所のテーブルの周りをゆっくりと歩き始めた。

 どうやら軽い捻挫だった模様。

「私も手伝います」
 まなちゃんが包丁を握って、キュウリを切り始めた。

 料理は滅多にしないあたしは今夜も盛り付け係。

 かよちゃんとまなちゃんが料理を作っている間に、あたしはお皿をテーブルに並べて、かよちゃんの手作りのリンゴジュースをコップに注いだ。

 今夜の晩ご飯は、かよちゃんとまなちゃんが作った生姜味噌おでん。タコとワカメとキュウリの酢の物。リンゴ入りのカレーライス。リンゴ野菜サラダ。豆腐となめこの入ったお味噌汁。スーパーで買ってきたお刺身の盛り合わせ。デザートは、かよちゃん特製のリンゴプリン。

 旅をしていると、いろんな料理が味わえる。

「いっぱい食べておくれ」
「はい。いただきます」

 草むしりにお買い物。今日は久しぶりに働いたし、お昼ご飯が少なめだったので、あたしはここぞとばかりに豪華な料理を食べまくった。

 スーパーで買ってきたお刺身の盛り合わせは、それなりの味だった。

 かよちゃんとまなちゃんが作った料理はどれも美味しくて、かよちゃん特製のリンゴプリンは、舌がとろけそうになるくらい、最高に美味しかった。

 商品化して売れば儲かるとあたしは思う。



 台所の流しで食器を洗っていたとき、「止みそうもないから、今夜はうちに泊まっていったらどうだい」とかよちゃんが微笑みながら言ってくれた。

 あたしとまなちゃんは、「泊まらせていただきます」と声を揃えて返事をした。

「さきちゃんとまなちゃんに見てもらいたいものがあるんだ」
 かよちゃんが椅子から立ち上がって、嬉しそうな顔で言った。

 リンゴの他に何かあるのだろうか。あたしとまなちゃんはかよちゃんに案内されて、廊下の突き当たりにある部屋に入った。
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