笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 朝ご飯を食べた後、かよちゃん先生のアトリエに三人で篭り、新鮮なリンゴジュースを飲みながら、彫刻作りに没頭した。

 こつこつと丸太を削り続けているうちに、ノミの使い方にも彫刻刀の使い方にもヤスリの使い方にも慣れてきて、だんだんリンゴらしい形になってきた。

 まなちゃんも順調に彫り進めている。



 晩ご飯を食べた後、かよちゃん、まなちゃん、あたしの順番でお風呂に入り、十時過ぎに床に就いた。

 かよちゃんとまなちゃんは、今夜もすやすやと眠りに就いている。

 あたしはなんだか眠れなくて、静かに布団から起き上がり、作詞作曲用のノートを持って縁側に座った。

 月明かりに照らされているリンゴの樹を見つめながら、かよちゃんのリンゴの歌を作った。



 かよちゃん家、滞在三日目。

 この日も朝ご飯を食べた後、かよちゃん先生のアトリエに三人で篭り、美味しすぎるリンゴジュースを飲みながら、彫刻作りに没頭した。

「かよちゃん先生! 猫の彫刻が完成しました!」
 嬉しそうな声で言ったまなちゃんが作った猫の彫刻は、まねき猫のような彫刻で、小判の代わりにリンゴを持っている。

 億万長者ならぬ、リンゴ長者。日本昔話が始まりそうな予感がする。

「とても可愛らしい猫だね。顔も手も胴体もリンゴもすごく上手だよ」
「こんなに上手に彫れたのは、かよちゃん先生のご指導のおかげです。本当にありがとうございました」
 かよちゃん先生に褒められたまなちゃんは、可愛らしい猫の彫刻を両手で持って、狭いアトリエの中で飛び跳ねながら喜んでいる。

「かよちゃん先生! リンゴの彫刻が完成しました!」
 まなちゃんが猫の彫刻を完成させてから、二時間後くらいに、ようやくリンゴの彫刻が完成した。

 へたの部分は難しくて作れなかったけど、リンゴの丸みが上手く表現できて、我ながら納得のいく仕上がりになった。

「美味しそうなリンゴだね。すごく上手だよ」
 かよちゃん先生が笑顔で褒めてくれた。

 あたしはすごく嬉しくなって、出来立てほやほやのリンゴの彫刻をかじってみた。

「歯が痛い!」
 あたしは思わず叫んでしまった。

 かよちゃんとまなちゃんがクスクス笑っている。
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