笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 よいしょ。よいしょ。よいしょ。どっこらっしょっと。

 三人で収穫した百八十個ものリンゴを台所に運んで、ナイフで皮を剥いて食べてみた。

「うまい! もう一個! おかわり!」
 あたしはリンゴの芯を掲げながら叫んだ。

「すごく美味しいね」
「はい! 最高に美味しいです!」
 かよちゃんもまなちゃんも笑顔で食べている。

 美味しいから美味しい。それ以上の言葉は何もいらない。

 げふう。ぶぶぶぶぶぶぶぶ。ぷうー。あたしはついつい調子に乗って、リンゴを食べ過ぎてしまい、ゲップとオナラを同時にしてしまった。

 あたしのオナラはいつも臭いけど、今日のオナラは全く臭くない。

 穂のかにリンゴの香りがする。実が出なくてよかったと思う今日この頃。



 収穫ほやほやの新鮮なリンゴをおもいっきり堪能した後、三人でリンゴジュースを作って、真っ赤なリンゴと出来立てほやほやの新鮮なリンゴジュースを持って庭に出た。

「和男さん、立派なリンゴを実らせてくれて、ありがとう。すごく美味しかったよ」
 かよちゃんが大切なリンゴの樹の根元に、収穫したばかりのリンゴと出来立てほやほやの新鮮なリンゴジュースの入ったコップを置いて、目を閉じて手を合わせた。

「和男さん、こんにちは。お世話になっています」
「美味しいリンゴをご馳走してくださって、どうもありがとうございました」
 あたしとまなちゃんもリンゴの樹に向かって手を合わせた。

 かよちゃんと和男さんの大切なリンゴの樹。来年も再来年もその先もずっと、立派なリンゴを実らせてくれるとあたしは思う。
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