笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～
　朝ご飯を食べて食器を洗った後、かよちゃん先生のアトリエで作った彫刻をリュックサックに仕舞って、あたしとまなちゃんは出発の準備を済ませた。

　いよいよお別れの時。

　かよちゃんとの別れも辛くて悲しい。あたしは涙を堪えながら、かよちゃんに出発することを伝えた。

「さきちゃん、まなちゃん、本当にいろいろとありがとう。リンゴを好きなだけ持っていっておくれ」
　かよちゃんが微笑みながら言ってくれた。

　あたしとまなちゃんは、奇跡のリンゴを十個ずつもらって、靴を履いて庭に出た。

「本当にいろいろとお世話になりました」
「かよちゃんとお別れするのは寂しいです」
　あたしとまなちゃんは、お世話になったかよちゃんの体に抱きついた。

　言葉では言い表せない、優しい香りがする。

「いつまでもお元気でいてくださいね」
　あたしはかよちゃんの体に抱きつきながら言った。まなちゃんはずっと無言のまま。

「さきちゃんとまなちゃんより長生きするよ」
　かよちゃんの言葉を聞いて安心したあたしは、二百歳まで生きてくださいね。と心の中でつぶやいて、かよちゃんの体から離れた。

　まなちゃんは涙を流しながら、かよちゃんの体にしがみついている。離れたくない気持ちはよくわかる。
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