笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「またいつか、お邪魔させてもらっていいですか?」
 かよちゃんの体から離れたまなちゃんが寂しげな表情で言った。

「もちろんさ。またいつでも遊びにおいで」
 かよちゃんは微笑みながら言ってくれた。

 本当に優しくて、とっても可愛らしくて、素敵すぎるおばあちゃん。

「それでは出発します!」
 あたしは声を張り上げて言った。しんみりとした別れは好きじゃない。

「かよちゃん! またね!」
 あたしとまなちゃんは、かよちゃんとリンゴの樹に手を振って、奇跡のリンゴをかじりながら歩き始めた。



「ピポピポピポピポピポピポ」
「何て言ったんですか?」
「何個食べても美味しいね。って言ったんだよ」
「あはははは! ピポピポ語は相変わらず難しいですね」

 いつもの愛らしい笑顔を取り戻してくれたまなちゃんとあたしは、食べ終わったリンゴの種をハンカチに包んで、デニムのショートパンツのポケットの中に仕舞った。

 かよちゃんと和男さんの愛情がたっぷりと注ぎ込まれているリンゴの種のお守り。有名な神社のお守りより効力があるとあたしは思う。

 ここ掘れわんわんわんわん! 

 あたしも花咲かじいさんになって、誰かに幸せを届けたいと思う今日この頃。奇跡は何度でも。
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