笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「マネージャーさんがいるということは、まなちゃんは普通の会社員じゃないんだね」
あたしはベンチに座ったまま、まなちゃんに素朴な疑問を投げかけてみた。
「…………実は、私は、まななというペンネームで執筆活動をしている作家なんです」
まなちゃんは少し間を置いてから、あたしの質問に答えてくれた。
「え、ベストセラーを連発している有名作家の?」
あたしが驚いたのは言うまでもない。
「はい。今までずっと隠していて、ごめんなさいでした」
まなちゃんがあたしに向かって頭を下げた。
「ビックリしたな。まなちゃんは、有名な作家さんだったんだね」
まななという作家なら、たまにしか本を読まないあたしでも知っている。ただ、顔は一度も見たことがないし、有名人が歩いて旅をするなんて思わないので、あたしはまなちゃんがまななさんだとは気づかないまま旅を続けていた。
あたしが今まで気づかなかったくらいだから、水樹くんたちも気づかなかったのかもしれない。作家さんは物知りで頭が良いイメージがある。まなちゃんの正体がわかって、まなちゃんがお金持ちな理由も博学な理由もやっとわかった。
「海老原さん、私はこのまま、さきさんと一緒に旅を続けたいんです。どうしても北海道の宗谷岬に行きたいんです。どうか、私の我がままを聞いてもらえませんでしょうか」
まなちゃんは瞳を潤わせながら、海老原さんに懇願した。
「……先生のお気持ちはわかりますが、新作の出版記念イベントにサイン会に握手会に雑誌の取材に講演会と、スケジュールが立て込んでおりますし、先生がお仕事を休まれて、一般女性の方と旅をしていることがマスコミに知られたら、大変な騒ぎになってしまいますので、私と一緒に東京に戻っていただけませんでしょうか」
海老原さんがまなちゃんに向かって深々と頭を下げた。
このままあたしと一緒に旅を続けるか、海老原さんと一緒に東京に戻るか、の二者択一。
まなちゃんはかなり悩んでいる様子。
あたしはドキドキしながら、まなちゃんの顔をじっと見つめた。
あたしはベンチに座ったまま、まなちゃんに素朴な疑問を投げかけてみた。
「…………実は、私は、まななというペンネームで執筆活動をしている作家なんです」
まなちゃんは少し間を置いてから、あたしの質問に答えてくれた。
「え、ベストセラーを連発している有名作家の?」
あたしが驚いたのは言うまでもない。
「はい。今までずっと隠していて、ごめんなさいでした」
まなちゃんがあたしに向かって頭を下げた。
「ビックリしたな。まなちゃんは、有名な作家さんだったんだね」
まななという作家なら、たまにしか本を読まないあたしでも知っている。ただ、顔は一度も見たことがないし、有名人が歩いて旅をするなんて思わないので、あたしはまなちゃんがまななさんだとは気づかないまま旅を続けていた。
あたしが今まで気づかなかったくらいだから、水樹くんたちも気づかなかったのかもしれない。作家さんは物知りで頭が良いイメージがある。まなちゃんの正体がわかって、まなちゃんがお金持ちな理由も博学な理由もやっとわかった。
「海老原さん、私はこのまま、さきさんと一緒に旅を続けたいんです。どうしても北海道の宗谷岬に行きたいんです。どうか、私の我がままを聞いてもらえませんでしょうか」
まなちゃんは瞳を潤わせながら、海老原さんに懇願した。
「……先生のお気持ちはわかりますが、新作の出版記念イベントにサイン会に握手会に雑誌の取材に講演会と、スケジュールが立て込んでおりますし、先生がお仕事を休まれて、一般女性の方と旅をしていることがマスコミに知られたら、大変な騒ぎになってしまいますので、私と一緒に東京に戻っていただけませんでしょうか」
海老原さんがまなちゃんに向かって深々と頭を下げた。
このままあたしと一緒に旅を続けるか、海老原さんと一緒に東京に戻るか、の二者択一。
まなちゃんはかなり悩んでいる様子。
あたしはドキドキしながら、まなちゃんの顔をじっと見つめた。