笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 函館から森へ。森から八雲へ。八雲から長万部へ。長万部から欄越へ。欄越から倶知安へ。

 テントで寝泊りしながら、雨の日も朝から晩まで歩き続けて、函館を出発してから、六日目にして、小樽運河で有名な小樽に着いた。

 お盆を過ぎても観光客はいっぱいいる。ネカフェに入ってシャワーを浴びた後、お土産代を稼ぐため、小樽運河沿いの歩道で路上ライブを行った。

 この日の稼ぎは、千二百三十五円。本音を言えば、もう少し稼ぎたかった。それでも、お土産代の足しにはなる。

 ノスタルジックな雰囲気が漂う小樽の街を見学しながら、小樽オルゴール堂に行って、手頃な値段のオルゴールを八個買った。

 あたしの帰りを待ってくれているまなちゃん。地元の友達の穂乃果とすみれさん。旅の途中でお世話になった水樹くんと綾香さんと田吾作おじいちゃんと幸子さんとかよちゃん宛の手紙を書いて、オルゴールとともに送った。

 かなり痛い出費だけど、後悔はしていない。みんな喜んでくれると思う。



 テントで寝泊りを繰り返し、札樽道を西に向かって歩き続けて、函館を出発してから、八日目にして、北海道の県庁所在地である札幌に着いた。

 さすが大きな街。人がわんさか歩いている。人の多い街で出来るだけ稼いでおかなければならない。ネカフェに入ってシャワーを浴びて、札幌時計台を見学した後、雪祭りで有名な札幌大通り公園で夕方まで路上ライブを行った。

 この日の稼ぎは、三千二百五十三円。靴を買いたいところだけど、この先、何が起こるのかわからないので、今は食料の確保が先決。

 夜の札幌の街をぶらぶら歩き回り、スーパーで焼き鳥の缶詰を五十個買った。

 頑張って歩き続けている自分へのご褒美として、屋台に入って日本酒を飲み、熱々の札幌ラーメンを食べた。

 いつの間にか、八月も下旬。テントの中に居ても、夏の終わりを告げる鈴虫の鳴き声が聞こえてくる。風流だけど、なんだか切なく聞こえる。
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