笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～

　爽やかな秋晴れの下、あたしは美瑛の観光マップを見ながら歩き始めた。

　ここは本当に日本なのか。と思えるほどの、メルヘンチックな風景が目の前に広がっている。テレビで見るのと自分の目で見るのとでは大違い。

　緑の草原に佇む赤い屋根の家とクリスマスツリーの木を見学した後、パッチワークの路にある恋人の木を見に行ってみることにした。

　その理由は単純明快。素敵な男性と出会えるかもしれないと思ったから。

　サイクリング♪　サイクリング♪　ヤッホー♪　ヤッホー♪

　自転車に乗って美瑛の丘を巡っている人たちを横目で見ながら歩いていき、三時過ぎに恋人の木の前に着いた。

　寄り添うように立っている二本の木。どっちの木が男性で、どっちの木が女性なのだろうか。名前のとおり、恋人同士なのだろうか。愛を語り合っているのだろうか。きみたちは何年付き合っているの？　と恋人の木に聞いてみたいところだけど、畑に入ってはいけません。と書かれた立て札が所々に立っている。旅人として、人として、マナーを守らなければならない。