笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～

「焼き鳥の缶詰を食べる？」
「にゃあ」
　あたしのすぐ目の前に座っている茶トラ模様の猫が可愛らしい鳴き声を上げた。

「お椀に移すから、ちょっと待っててね」

　缶のギザギザで口を怪我したら大変なので、焼き鳥の缶詰をお椀に移した。

　水筒の水をマグカップに入れて、茶トラ模様の猫の目の前に置いた。

「にゃんにゃんにゃん」
　茶トラ模様の猫は、お椀に顔を埋めた後、顔を上げて首を横に振った。

「毒なんて入っていないから、食べても大丈夫だよ。あたしも食べるから、見ててね」
　茶トラ模様の猫が見ている前で、あたしは甘辛い焼き鳥を口に放り込んだ。

「にゃあ」
　あたしが食べている様子を見て安心したのだろうか。茶トラ模様の猫は、お椀に顔を埋めて、甘辛い焼き鳥を食べ始めた。

「美味しい？」
「にゃあ」
　どうやらお腹を空かしているようだ。茶トラ模様の猫は、甘辛い焼き鳥をぺろりと平らげた。

「おかわりする？」
「にゃあ」
　焼き鳥が好きなのだろうか。茶トラ模様の猫は、焼き鳥の缶詰を七缶も平らげた。

「お腹一杯になった？」
「にゃあ、にゃあ、にゃあ」
「お腹一杯になったんだね。抱っこしてもいい？」
「にゃあ」
「ありがとう。それじゃあ、抱っこさせてもらうね」
　あたしは地面に寝そべって、茶トラ模様の猫を抱き上げた。

　たかーい。たかーい。たかーい。たかーい。たかーい。

　長い尻尾をふりふりふりふり。可愛らしいタマタマがぶらぶらぶらぶら。優しい目をしている茶トラ模様の猫は、雄猫だ。