笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「きみは、どこから来たの?」
「にゃあ」
「きみは、にゃあから来たんだね」
「にゃあ」
「そっかあ。あたしの名前は、さきだよ。きみの名前は何て言うの?」
「にゃあ」
「きみの名前は、にゃあなんだね」
「にゃあ」
「そっかあ。きみも旅をしているの?」
「にゃあ」
「そっかあ。きみはどこに向かっているの?」
「にゃあ」
「きみは、にゃあに向かっているんだね」
「にゃあ」
「そっかあ。あたしと一緒に宗谷岬に行く?」
「にゃあ、にゃあ、にゃあ」

 どうやらあたしに懐いてくれたようだ。茶トラ模様の猫は、あたしが話し掛ける度に、可愛らしい鳴き声で返事をしてくれる。何を言っているのかわからないけど、慰めてくれているのかもしれない。猫の言葉がわかるようになりたいと思う今日この頃。

「きみに名前を付けてあげようか」
「にゃあ」
「どんな名前がいいかな? 何かリクエストはある?」
「にゃあ」
「にゃあがいいの?」
「にゃんにゃんにゃん」
「じゃあ、違う名前にするね」
 あたしは茶トラ模様の猫を抱き上げたまま、名前を考えてみた。

 あまあまからからやきとりー
 ちょっぴりからくちにほんしゅしゅしゅー
 にゃにゃにゃにゃセクシーダイナマイトボンバーイエにゃん

 どれもこれも長いし、ちょっとイマイチ。茶トラ模様、茶トラ模様、走るのラン。
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