笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 ビブレ前の時計の時刻は、十時十三分。
 今夜は横浜で宿泊。
 夜の繁華街は危険に満ち溢れている。野宿するわけにはいかない。
 あたしは気持ちを切り替えて、二十四時間営業のファミレスに向かった。

 何も注文しないで宿泊するわけにはいかないので、ドリンクバーを注文した。
 喉が乾いているので、コーラを一気にごくごくごく。アイスコーヒーも一気にごくごくごく。紅茶も一気にごくごくごく。オレンジジュースも一気にごくごくごく。あまり飲み過ぎると、おしっこしたくなるから、このくらいにしておいてやろう。
 ファミレスで寝ると、店員さんに注意されてしまう。
 起きているように見せかけるため、黒の水性マジックで瞼の上に目を描いた。
 これで寝る準備は万端。座ったまま寝るのはしんどい。出来ることなら横になって眠りたい。ソファーに座りっぱなしだと、お尻が痛くなる。おっと、歯を磨くのを忘れていた。

「お客様、朝ですよ。そろそろ起きてください」
 店員さんに起こされて目が覚めた。どうやらあたしは、いつの間にか横になってしまったようだ。
「あ、う、はぁい」
 寝ぼけた頭をしゃきっとさせるため、冷たいアイスコーヒーを飲みまくり、トイレに入って顔を洗って歯を磨いてファミレスを後にした。
 今日は朝からどんよりと曇っている。梅雨入り前の曇り空。気持ちだけは晴れでいよう。
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