笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～
「やったね！　ちゃとらん！」
「にゃあ！　にゃあ！　にゃあ！」

　この喜びを早く伝えたい。さっそくまなちゃんに連絡。

「こんにちは。お願いしたいことがあるんですが」
　若い男女のカップルに事情を説明してみた。

　あたしはちゃとらんを抱っこして、日本最北端の地と刻まれた碑のある三角形のモニュメントの前に立った。

　写メを撮ってもらい、お姉さんにスマホを貸してもらった。

　はろはろ。つい今しがた宗谷岬に着いたよ。すっごく嬉しいよ。親切なお姉さんに写メを撮ってもらって、スマホを貸してもらったんだ。あたしが抱きかかえている猫は、美瑛のパッチワークの路の恋人の木の前で出会ったちゃとらんだよ。宗谷岬まで、ちゃとらんと一緒に旅をしたんだ。ちゃとらんはすごく賢くて、歌がとっても上手なんだよ。旅から帰ったら、まなちゃんの前で、ちゃとらんと一緒にライブをするね。

　まなちゃんにメールを送った後、石畳の上に座り、ちゃとらんを膝に乗せて、濃紺色のオホーツク海を見つめながら、神奈川から宗谷岬までの旅を振り返った。

　本当にいろんなことがあった。
　いろんな経験をした。
　いろんな人と出会った。
　いろんな人と話した。
　いろんな人と触れ合った。
　いろんな人の笑顔を見た。
　いろんな人の優しさに触れた。
　いろんな人の営みを見た。
　いろんな人の人生を知った。
　いろんな人と友達になった。
　いろんな人から、いろんなことを教わった。

　時には笑い、時には怒り、時には涙を流し、時には叫び、一生分の感情を使い果たした気がする。こんなに素敵な体験が出来たのは、歩いて旅をしたからだと思う。
　
　この旅を通じて、あたしは少しは成長しただろうか。
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