笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「あたしとまなちゃんの彫刻の画像を見てみようか」
「にゃあ」

 あたしはスマホを握り締めたまま、ちゃとらんを膝に乗せて、メールに添付されている画像を開いてみた。

「わあ、すごい」

 あたしとまなちゃんが手を繋いでいて、大きなリンゴをかじりながら歩いている彫刻。顔も体も手も足もリンゴも繊細に表現されている。今にも動き出しそうなくらい、躍動感がある。

「この画像に映っている彫刻はね、かよちゃんというおばあちゃんが作ってくれたものなんだよ。すごいリアルでしょ」
 あたしとまなちゃんの彫刻の画像をちゃとらんに見せてみた。

「にゃあ」
 ちゃとらんが右前足を伸ばして、スマホの画面に触ろうとしている。

 彫刻が上手なかよちゃん先生に、ちゃとらんの彫刻も作ってほしいと思う今日この頃。

「まなちゃんに電話を掛けるから、ちょっと待っててね」
「にゃあ」

 ちゃとらんを膝に乗せたまま、まなちゃんに電話を掛けた。

「もしもし、まなちゃん、さきだよ。忙しい中、メールを送ってくれて、ありがとね」
「私こそ、ありがとうございます。さきさんの声を聞けて、すごく嬉しいです。お元気そうですね」
「あたしもちゃとらんも元気だよ。今からライブをやるから、まなちゃんも聴いてくれるかな?」
「はい! ぜひ聴かせてください!」
「通話状態にしたまま、スマホをジーンズのポケットに入れるね。また後でね」

 ちゃとらんを膝から下ろして立ち上がり、スマホを貸してくれている親切なお姉さんと彼氏さんに声を掛けた。

 さあ、ライブの準備だ。
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