笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～

「ちゃとらんも、あたしの前に座ってね」
「にゃあ」

　スマホを通話状態にしたまま、ジーンズのポケットに入れて、アコギを持って、三角形のモニュメントの前に立った。

　旅の締めくくりのライブの観客は、ちゃとらん。あたしにスマホを貸してくれているお姉さんと彼氏さん。観光客のみなさん。普段のライブは緊張しないのに、今日はなんだか緊張する。

「みなさん、こんにちは。それでは歌います。曲のタイトルは、未来への道しるべです」
　万感の思いを込めて、あたしはギター演奏を始めた。

　ジャーン♪　ジャーン♪　ジャジャーン♪　ジャーン♪　ジャーン♪　ジャジャジャーン♪　ジャーン♪　ジャーン♪　ジャジャーン♪

　緊張をほぐすために、ここでひとまず深呼吸。ふう。

　ジャーン♪　ジャーン♪　ジャジャーン♪　あたしはギター演奏を続けながら、神奈川から宗谷岬までの旅を、今一度、振り返り、歌詞の一部を変えた。