笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 立ち食い蕎麦屋で掻き揚げ蕎麦を食べて腹ごしらえをして出発し、品川を越えて、辺りが薄暗くなってきた頃、サラリーマンの街、新橋に着いた。
 
 スーツ姿の人がいっぱい歩いている。
 飲みに行く人。家路を急ぐ人。人の波が途絶えることはない。
 旅に出てから三発目の路上ライブは、新橋駅前の広場。
 おじさん受けするように、胸元の大きく開いたセクシーキャミソールと半ケツ状態のハイレグデニムショートパンツ。メイクはやや濃い目。
 観客が集まるまでの間はギター演奏のみ。観客があるほど度集まってから歌を歌う。

 ジャーン♪ ジャーン♪ ジャジャーン♪ ジャカジャカジャーン♪

 ゆっくり演奏しているうちに、徐々に観客が集まってきた。
 仕事帰りのお父さん。
 ご機嫌そうなお父さん。
 見るからにスケベそうなお父さん。
 今夜の観客は中年おやじばかり。
 女性と若い子はほんの数人しかいない。
 あたしはギター演奏を続けながら、即興で歌詞を考えた。

 新橋駅前の広場での路上ライブの曲は、働くお父さんの応援歌。日本を支えているサラリーマンに捧げる歌。
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