笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～

　姓は佐藤、名はさき。
　生まれも育ちも湘南藤沢。
　今日からまた無職。
　独身、彼氏なし。
　セフレは数人いる。
　幸いなことに借金は無い。
　人呼んで、おっぱい番長さき。
　そんなあたしの夢は、プロのシンガーソングライターになること。
　
　テン♪　テン♪　テレンテン♪　テン♪　テン♪　テレンテン♪　

　ピアノの旋律が美しい、エイミーマンのワイズアップを聴いて音楽が好きになり、中ニの頃から曲を書き始め、十四年間の間に書き上げた曲は、三百曲以上になる。
　あたしは作詞より作曲のほうが得意で好きだ。作詞は作曲より難しい。いい詞はなかなか書けない。くだらない詞やエロい詞ばかり書いている。

　自分の曲をいろんな人に聴いてもらうため、週に二回ほど、藤沢駅前の広場で路上ライブを行っている。たまに湘南海岸で歌うこともある。
　ギターを弾きながら歌っていると、嫌なことも何もかも忘れられる。
　歌うのは楽しい。音楽は素晴らしい。音楽は人類の宝だ。

　当然のことながら、バンドを組んだ経験はある。
　定時制高校に通っていた頃に『さきと愉快なガタンゴトンたち』というロックバンドを組んだ。
　しかしながら、メンバーと音楽の方向性が合わず、ヴォーカル＆ギターのあたしが脱退して、あっさり解散。
　それ以降、ずっとソロで活動を続けている。

　シンガーソングライターデビューを目指して、インディーズレーベルに音楽デモテープを送り、音楽オーディションを片っ端から受けまくったけど、どのオーディションにも受からず、レーベルからもお呼びがかからないまま。
　それでも夢は諦めない。夢は諦めたら終わりだ。いつの日か、あたしの才能が認められて、シンガーソングライターとして表舞台に立てる日が来るかもしれない。
　だから、貧乏でも、音楽活動は続ける。