笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～
「これで気が済んだか」
「は、はい。本当にありがとうございました。このお金を受け取ってください」
　おっぱい好きな中年おやじが財布から千円札を取り出した。

「あたしは娼婦じゃないから受け取らないよ。あんたの大切な小遣いでしょ。財布に仕舞っときな」
「は、はい」
　おっぱい好きな中年おやじは、千円札を財布に仕舞った。

「女性を侮辱するようなことは、もう二度と言うなよ」
「は、はい。もう二度と言いません。心に固く誓います。妻と子供たちを大切にしようと思います。今夜はいろいろとありがとうございました。それでは失礼致します」
　おっぱい好きな中年おやじは、あたしに向かって何度も頭を下げて、新橋駅に向かって歩いていった。

　無職のあたしが言えたことじゃないが、日本人は働き過ぎなんだと思う。
　だから余計にストレスが溜まる。
　溜め込んだストレスを発散するため、女性を食い物にしようとする奴がいる。
　ストレスを感じることは必要だと思うけど、過度なストレスは必要ないと思う。
　過労死で亡くなる人が後を絶たない、このおかしな世の中。
　そこまで働かなくても、この世の中は上手く回るとあたしは思う。

　お色気作戦が功を奏したのか。働くお父さんの応援歌が受けたのか。今夜の稼ぎは、三千百三十二円。これだけ稼げれば十分。今夜はネカフェに泊まる。ナイトパックで朝までのんびり。
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