笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「というわけだから、普通の旅じゃないんだよ。どこへ行くにも自分の足で歩かないといけないし、泊まるところがないときは、どこかで野宿することになるし、危険な目に遭うかもしれないんだよ。まなちゃんはお金持ちなんだから、電車や飛行機に乗れば、簡単にあちこち行けるんだよ。それでも、あたしと一緒に旅をしたいの?」
 まなちゃんの気持ちが本気なのかどうか確かめるため、強く念を押した。

「さきさんと一緒に旅が出来るなら、ルールは必ず守ります。私は街歩きを趣味としていますので、脚力にも体力にも自信があります。どうか私を連れて行ってください。よろしくお願いします」
 まなちゃんがあたしに向かって頭を下げた。どうやら本気のようだ。

「それなら、あたしと一緒に旅をしようか」
「OKということですね。どうもありがとうございます。ものすごく嬉しいです。旅仲間になった記念として、生ビールで乾杯しましょう」

 まなちゃんがこの上ない笑顔で生ビールを注文してくれた。

 いつの間にか、女一人旅から女二人旅へ。

 愛らしい笑顔であたしを見つめているまなちゃんは、体が細いので、力が弱そうに見える。

 どんなに危険な目に遭っても、まなちゃんを守らなければならない。
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