笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 お風呂から出た後、まなちゃんはベッドに寝転がって、ノートに何かを書き始めた。

「さっきから何を書いてるの?」
 楽しそうにペンを走らせているまなちゃんに聞いてみた。

「旅日記です。忘れないうちに記しておこうと思いまして」
「そっか。良い思い出になるといいね」
「はい。明日からも楽しみです」
 明るい声で言ったまなちゃんは、両足をばたつかせながら、夢中な様子で旅日記を書いている。

 あたしも旅日記を書こうかな。やっぱり、めんどくさいからいいや。

「ねえ、まなちゃん。ギターを弾いてもいいかな?」
「はい。どうぞ弾いてください」 
「静かに弾くからね」

 まなちゃんが旅日記を書いている間に、あたしは作詞作曲用のノートを開いて、アコギを奏でながら、まなちゃんにプレゼントする曲を考えた。

 体は疲れているけど、頭は冴えている。
 久しぶりにいい歌詞が思い浮かんだ。

 あたしがまなちゃんの曲を作っていることは、まなちゃんにはまだ内緒。

「あ、いつの間にか、もう一時だね。そろそろ眠ろうか」
「はい。さきさん、おやすみなさい」
「まなちゃん、おやすみ。また明日ね」
 
 いつの間にか、消灯係になったあたしは、部屋の電気を消してから、ベッドに入って横になった。

 今夜もまなちゃんが隣のベッドですやすやと眠っている。当分の間、ひとりエッチは我慢。
< 56 / 258 >

この作品をシェア

pagetop