笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 熊谷から本庄へ。本庄から高崎へ。高崎から前橋へ。

 雨の日が続いているけど、今のところは何事もなく順調。

 まなちゃんの足取りはずっと軽いまま。

「あ、あれ」
 大通り脇の歩道を歩いていたとき、まなちゃんが急に立ち止まった。

「どうしたの?」
 あたしも立ち止まって、まなちゃんに聞いてみた。

「五十と書かれている標識が見えました。たぶん、前橋付近で標識を見落として、道を間違えたのだと思います」
「この道をこのまま進んだら、どこに行くの?」
「茨城県の方に行って、太平洋に出ると思います」
「太平洋かあ。日本海と反対側の海だね」

 ここまで順調に歩き続けてきたのに、標識を見落としただけで道を間違えてしまった。

 あたし一人だけだったら、このまま真っ直ぐに進んで、太平洋に出ていたと思う。

 地理に詳しいまなちゃん。とても頼もしい存在である。
< 60 / 258 >

この作品をシェア

pagetop