笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 昨日は夜遅くまで頑張って歩いたので、今日は早めにチェックイン。
 まなちゃんと一緒に温泉街を歩いて回り、宿泊料金が安そうに見える温泉宿が目に止まった。
 せっかく温泉宿に泊まるのだから、ケチってはいけない。でも、ビジネスホテル泊まりが続いたし、路上ライブもパッとしなかったので、なるべく安い料金で泊まりたい。

「ねえ、まなちゃん。あの温泉宿でいいかな?」
「いいですよ」
 いつもの愛らしい笑顔で返事をしてくれたまなちゃんと、あたしが吟味して選んだ温泉宿に入り、靴を脱いでフロントに向かった。
 建物の外観は古いけど、室内は綺麗で豪華な作り。宿泊料金がいくらなのか心配になる。

「こんにちは。宿泊料金はおいくらですか?」
 さっそくフロントのお姉さんに聞いてみた。
「こんにちは。ようこそお出でくださいました。当旅館のご宿泊料金は、お一人様、一泊二日、夕食朝食付きで、二万三千円となっております」
「そ、そうなんですか」
 フロントのお姉さんの説明を聞いて、あたしは動揺してしまった。

 高い! 高いだろ! 安そうに見えたから入ったんだぞ! 本庄のビジネスホテルは、四千円だったぞ! 頼むから! まけてくれよ! などと言ってはいけない。自分で選んで入ったからには、宿泊しないといけない。
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