笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～
「お気持ちは嬉しいんですが、歩いて行かないといけないルールなんです」
　あたしが言う前に、まなちゃんが言ってくれた。
「へえ、そんなルールがあるんだ。ちょっとくらいならいいんじゃないの？」
「ちょっとだけでもダメなんです。申し訳ありませんが、ご遠慮させていただきます」
「そんなこと言わずに、僕たちと一緒にドライブしようよ」
「そうだよ。楽しい思い出になると思うよ。さあ、二人とも早く乗って」
　まなちゃんがきっぱりと断ったのに、しつこく誘ってくる兄さんたち。あたしは二人の目つきを見ていて、本能的に危険を察知した。
「まなちゃん！　早く走って逃げて！」
「え、どうしてですか？」
「いいから！　早く走って森の中に逃げなさい！」
「は、はい」
　あたしの言うことを素直に聞いてくれたまなちゃんは、道端にリュックサックを投げ出して、身軽な状態で森の中に駆け込んでいった。これでひとまず安心。
「あーあ、可愛くて若いほうが逃げちゃったよ」
「ちょっと失敗したな」
　急に言葉遣いが荒くなったナンパ野朗どもは、道路脇に車を止めて外に出てきた。
　ポロシャツ姿のナンパ野朗の身長は、百七十五センチくらい。Ｔシャツ姿のナンパ野朗の身長は、百八十五センチくらい。二人とも、あたしより背が高くて、がっちりとした体型をしている。普通に戦ったら勝てない。
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