笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～
「まなちゃーん！　もう大丈夫だから！　出てきていいよ！」
　あたしは森に向かって叫んだ。まなちゃんがショックを受けていないか心配だ。
「は、はい。すぐに行きます」
　怯えたような声で返事をしてくれたまなちゃんは、ゆっくりと歩いて森の中から出てきてくれた。
　目に涙を溜めていて、とても暗い表情をしている。やっぱり、かなりショックを受けているよう。
「さっきの奴らは逃げたよ。本当に大丈夫だからね」
　まなちゃんを安心させるため、あたしは優しい口調で語り掛けた。
「はい。さきさんは、とても頼もしいですね」
　まなちゃんに頼もしいと言われて、あたしは恥ずかしくなった。まなちゃんが見ている前で、乱暴な言葉を使ったし、ナンパ野朗どもの股間を蹴りまくったから。
「あたしが言わなくてもわかっていると思うんだけど、さっきのような奴らがいるから、人を簡単に信用したらダメだよ」
「はい。とても勉強になりました」
　あたしは強姦に襲われそうになったことが何度かあるけど、まなちゃんは初めてだったのだと思う。今回のことがトラウマにならないように、まなちゃんの心のケアをしていかなければならない。
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