笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
旅に出ることを穂乃果に報告するため、あたしは小銭を握り締めて、アパートから五百メートル以上も離れている公衆電話に向かった。
公衆電話はもっとたくさん置きやがれ! 携帯電話を持っていない人のことを考えやがれ! 不便で仕方ないだろ! と叫ばずにはいられない。
「もしもし、さきだけど、あたしは旅に出ることにしたよ」
「本当に旅に出るの?」
「うん。もう決めたんだ」
「途中でお金が無くなったら、どうするの?」
「なんとかなるよ」
「なんともならないわよ」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。旅の途中で手紙を送るね」
「本気なんだね。無事に帰ってくるんだよ」
「うん。必ず帰ってくるよ。それでさ、穂乃果にお願いしたいことがあるんだ。あたしが旅から帰ってくるまでの間、ギターとCDとミニコンポを預かってもらえないかな」
「いいよ。明日の夜に、車で取りに行ってあげるね」
「ありがとう。待ってるね」
穂乃果の優しさに感動したあたしは、泣きながら走ってアパートに戻った。
このおんぼろアパートとも、もうじきお別れ。
みーちゃんたち、さようなら。いつまでも元気でいるんだよ。
今夜は、エイミーマンのワイズアップがやたらと染みる。
公衆電話はもっとたくさん置きやがれ! 携帯電話を持っていない人のことを考えやがれ! 不便で仕方ないだろ! と叫ばずにはいられない。
「もしもし、さきだけど、あたしは旅に出ることにしたよ」
「本当に旅に出るの?」
「うん。もう決めたんだ」
「途中でお金が無くなったら、どうするの?」
「なんとかなるよ」
「なんともならないわよ」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。旅の途中で手紙を送るね」
「本気なんだね。無事に帰ってくるんだよ」
「うん。必ず帰ってくるよ。それでさ、穂乃果にお願いしたいことがあるんだ。あたしが旅から帰ってくるまでの間、ギターとCDとミニコンポを預かってもらえないかな」
「いいよ。明日の夜に、車で取りに行ってあげるね」
「ありがとう。待ってるね」
穂乃果の優しさに感動したあたしは、泣きながら走ってアパートに戻った。
このおんぼろアパートとも、もうじきお別れ。
みーちゃんたち、さようなら。いつまでも元気でいるんだよ。
今夜は、エイミーマンのワイズアップがやたらと染みる。