笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～

　水遊びに夢中になっていたとき、上流の方から、何やら丸い物体が流れてきた。
　野球ボールでもテニスボールでもない。あの丸い物体はいったい何だ。
　あたしは目を凝らして、上流から流れてくる丸い物体を見つめた。

　どんぶらこ。どんぶらこ。どんぶらこ。

　上流から流れてくる丸い物体は、あたしとまなちゃんの方にだんだん近づいてくる。
　あの丸い物体は……。ピンク色の桃だ。
　どうしてこのタイミングで桃が流れてくるのだろうか。山の上に桃畑でもあるのだろうか。誰かが川に落としてしまったのだろうか。あたしは不思議に思った。

「まなちゃん！　上流から桃が流れてきたよ！」
　ピンク色の桃を見つけて興奮したあたしは、大きな声でまなちゃんに知らせた。
「あ、本当に桃ですね」
　まなちゃんは不思議そうな顔で言った。あたしと同様に、どうして桃が流れてくるのか不思議に思ったに違いない。

　どんぶらこ。どんぶらこ。どんぶらこ。

　上流から流れてくるピンク色の桃を見ていて、あたしはあの桃を拾いたいという衝動に駆られてしまった。