桜の花が咲くころに
高校名の【桜ヶ丘高校】の名前にふさわしいほど、校門の近くにも、校庭にも、たくさんの桜の木が植わっている。
風のそよぎと共に、その花びらを舞い上がらせていた。
「ねぇ…りっちゃん。」
「んー?どうした?」
「私ね、今までも桜の花とか、空とか好きだったんだけど、特に何か思い出や、想い入れがある訳ではなかったのよ。
でも…今日はどうしても、桜の花の色とか…空の色とか…凄く目について、なんかこう…心にグッと来る。
凄く綺麗なのに、何だか切なくなって…理由もなく…泣きたくなる。
何でだろう…?」
「それって今までもあったの?」
「ううん。今日が初めて。」
「何だか桜、恋でもしてるみたいなこと言ってるね。」
「は?誰が誰に恋してるのよ!ありえないよ~!」
そんな事を言い合いながら歩いていると、校門の前で、桜の木を見上げたまま突っ立っている人が居た。