桜の花が咲くころに

「酷いな〜。俺、結構真面目に言ってるのになぁ。」


軽い感じで言ったあと、今度は真面目な表情になり


「桜、俺と付き合ってくれませんか?
何があっても、絶対に…俺が桜を守るから。」


私が両手で持っているミルクティーの缶の上から、橘くんが包み込むように手を重ねてきた。


「はぁ〜〜〜っっ!?」


言葉の意味を、急速に理解した私の頭が、次の言葉を考えるよりも先に、勝手に口が動いてしまった。


突然何なの?


自慢じゃないけど、私…生まれてこの方、彼氏が居たこともなければ、好きな人が居たこともない。

そう!恋愛したことがない!


「ねぇ桜?付き合ってくれない?」


子犬が耳を垂らしたような様子で、そんなこと言われたら、私の心はグラグラと揺れるばかりだ。


でも…

こんな時に限って思い出したんだ。



【無理なのよ】




千草が言っていた

【王子を好きになっても無理】

という言葉を…。


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