桜の花が咲くころに

「いやぁ〜でも凄いね〜桜。

【王子の好きな人】を一目見ようと、他のクラスから桜を見にくるんだから。」


すっかり定番になった中庭での昼食。

ベンチに腰掛け、りっちゃんがお弁当の玉子焼きを頬張りながら言う。

それを聞いた千草が

「本当に凄いわ。みんな『結城さんってどの子?』って聞いてくるもんね。」

という。

でも私は、そんな二人の会話を聞き流し、目の前のお弁当を口の中に掻き込むように食べていた。

そんな私の様子を見て、千草がクスクスと笑う。


「もう桜、落ち着いて食べなよ!
そんなに焦って食べなくても、王子は逃げないよ。」


そう…恋人活動をしようと決めたあの日、お互いにLINEの連絡先を交換したけど、その後全く連絡がなく、今日…まさにお昼を食べようとしていた所で、


【お昼食べ終わったら、音楽室まで来てくれない?】


と初めてのLINE。


「慌ててなんかない!ただ…私は海人に一言文句が言いたいだけなの!」


そう!こんな状態になった原因の海人に、文句を言ってやるんだ。

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