桜の花が咲くころに

「海人は誰と私を間違えてるの?」


海人から掴まれた左腕は、緩まることはなく、更に強い力が加わる。


「………。」


何も言わない海人を眺めていると、何故か心臓を直接掴まれたように胸が苦しくなる。

海人から【一目惚れした】と言われ、自分でも驚くほど舞い上がっていたのかもしれない。


「ねぇ海人。本当のこと教えて?

海人は別に好きな人が居るんでしょう?私は…その人の代わり…なんでしょう?」


「違う!」


私の方に顔を向けると、今までの海人のイメージとは真逆の荒々しい声をあげる。


「俺は…… 」


そう言うと、私の腕を掴んだまま、海人が椅子からゆっくり立ち上がると


「俺は確かに…ずっと好きな人が居たんだ。」


そう静かに答えた。


< 47 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop