桜の花が咲くころに
私…今まで、こんなに男性と接近したのは、お父さんくらいで…
緊張のあまり、目の前にある男の子の首元に視線集中…。
あ…喉仏から顎にかけてのラインが綺麗だな。
そんな事を思っていると、
「はい。取れたよ。」
そう言って、笑顔の彼が桜の花びらを見せてくれた。
「…何だ。花びら取ってくれたんですね。ありがとうございます。えっと…名前…」
そう言うと、彼の瞳が一瞬切なげに揺れた気がした。
でも…それは一瞬で、すぐにまた先程の柔らかい笑顔に戻り
「俺は、橘 海人(たちばな かいと)。
今日から桜ヶ丘高校の1年生。君の名前は?」
「私は、結城 桜(ゆうき さくら)。
私も今日から桜ヶ丘高校の1年生なの。よろしくね。」
そう言うと、彼につられて微笑む。