不器用な彼に恋した私。




強引に手を引かれて乗せられた車。
ピッカピカの赤い車体は、私の目を眠気から連れ出してくれる。


なんだ!?この車は!!!

お洒落なデザインで、乗るのに気が引ける。
私、再び脳内フリーズ。
脳の全部の思考停止に、私自身も何が何だか分からなくなってきた。


「ややややっぱり...。」
「ややややっぱり...?笑」


「帰ります。」
「はい、乗った乗った。
まだ俺だって仕事残ってんだよ。」


じゃあ、送らなければいいじゃん!
そんな思いは虚しく終わり、強制的に押されて乗り込んだ車の中。
に...匂いまでシャレオツ。。







「おい、井上。」
「ッ...あっ、はいっ!」


おっつ、息してなかった。私。


「もうすぐ、お前出張が入ってるだろ?」


あー、そういえばそんな話を今朝聞いたような。

「北海道出張です。
札幌ラーメン、美味しいですよねー。」

「...、札幌ラーメン置いておいて。
資料とかちゃんと把握してんのか?」


大丈夫です!
私にはUSBがありますから!


そう言おうとして、隣で運転する翔さんの方を見ようとしたら、


超カッコよく、その人はハンドルを握ってるんですよね...。
綺麗な横顔。
ぷっくりした唇。。


どっきゅーーーん!!



「聞いてんのか?」

はっ、不覚!


「んんっ、失礼しました。
一応USBに全ての資料を取り込んでいるので、自宅でも把握していくつもりです。」


私とした事か。
そこはバカ真面目に、真剣に。。



「ふーん、そ。」


素っ気な!!
超素っ気ない!!!


シーンとしたまたこの重い空気感。
再来...。。
何を話せばいいんだ。


てか、恋人だよね。
私らは。


赤信号で停車した車。
もっと空気感はどんより。

あぁ、もう。
あそこのスーパーで止めてもらって、借りを返すためのお弁当作りに使う材料を買おう。。





「あっ、あの!
あそこのスーパーで止めてください!」

「何で?」

「ええっ!?」


何でと言われましても。


「すぐ近くにあるんです...自宅が。。」

嘘です。ごめんなさい。


ふーん、と鼻を鳴らした翔さんは、私が懇願していたように、スーパーで止めてくれた。






「お疲れ様でした...。」
「あぁ。」

フェ...フェラーリ。
もう、恐怖症級に怖い。
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