不器用な彼に恋した私。




「うん、悪くない。」
「もっと他の言葉無かったの?」


「は?合格でも不合格でもないオムライスだ。
他の言葉はねぇよ。」


憎たらしい声で憎たらしいセリフ。
もっと他の言葉、掛けてよ!!
傷心気味の私には、その言葉でさえもキツイんですよ。


社員食堂のイートインスペースの1角。
そこで、さっきのオムライス弁当を食べてもらう。



「おま...お前、それだけで午後やっていくつもりか!?」

野菜ジュースだけの私に、そう言う二宮。


「関係ないでしょ?痩せていいじゃん。」

ズルズル、野菜ジュースを飲む。
さっきのボンキュボン見たら、食欲も減る。








「しかし、さっきのは無いわー。
ボンキュッボンのスレンダー美人。

しかも優しそうにエスコートのお仕事男子。
ただもんじゃない、お仕事男子。」


ふたりの並んだ姿はもう、俳優さんと女優さんみたいで、美男美女そのもの。
カップルに見間違えてもおかしくない。








「確か、さっきの美人は~...。
あ、そうそう。松本優子だ!
あの女、結構落ちるヤツ多い。俺も落ちそうになったくらいだ。」


そっか...松本優子さん。
さっき...翔さん。

『優子』って愛おしそうに松本さんのこと、呼んでたな...。









ボーッとしてた私を見て二宮は、
お前らしくないって言って、最後の1口サイズのオムライスを私の口に半ば強制的に入れた。



「ん...!?」
「ん?間接キスって?
...意識すんな、ボケ!!」


間接キスを意識した私はバカでした。




口の中で溶けてく卵。
あの無邪気な笑顔を私に見せて、美味しいって微笑んで欲しかったな...。



午後の業務はなかなか集中出来なくて、何度も翔さんに怒られた。
頭がボーッとして、何が何だか分かんなくなった。
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