不器用な彼に恋した私。




またまた残業入りの私。
ミスばかりで、数字の打ち間違えが酷い。



「井上、打ち間違えが酷い。
いい加減にしろ。」

「ぁっ...すいません。」


あぁ、泣きそ。
ボーッとした頭をフルに回転させてやったつもりだ。
2人きりのオフィスなのに。
ピリピリした空気感。

空気清浄機、ちゃんと作動してるはずなのに。



苦しい空気。




受け取ったプリントには誤字脱字や数字の打ち間違えを指摘した付箋がびっしり貼り付けられていて。
もっと頭の中がぐるぐる回った。




疲れを癒すチョコレートも食べる気はなく、パッケージ開けたのを酷く後悔した。
チョコレートは外気に触れて溶け始めている。





「どうしたんだ?井上。
こういう数字系は得意だったろ。」

時計の秒針の音と一緒に重なった低い声。



ピクリと体が反応した。



「...スグ、訂正シマス...。」
「...人の話、聞いてたか?どうしたんだ?」



あなたのせい。
あなたのせいで気がかりなことが生まれたんです。



なーんて、言えるわけなく、ただ黙り込んでキーボードを叩く手を止めない。










「井上、答えろ。」



言うもんか。



「井上!!」



泣きそうになった目を隠そうと下をうつむいた時、翔さんの指が私の手首を掴んだ。



あー、零れたよ。


とうとう溢れた涙は隠す事が出来ず、ちょーど悪ーい所に、



『翔くん...?』
って天使みたいな声であの優子さんが立ってた。








あーもー!!
とんだ修羅場だ。







< 15 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop