不器用な彼に恋した私。





「...翔くん。その子誰?」
「...あぁ、コイツ?後輩。」


“コイツ”に“後輩”...かぁ。
所詮、私はそんな存在なんだ。


涙が溢れてはこぼれる。
涙を隠すように顔を俯いて隠す。


「ふーん。
翔くん、もう帰ろ!今、私終わったの!
昨日、翔君の、お家で見た映画の続き観よ!」




...翔君の、



...お家?




掴まれた手首が痛くて、咄嗟に翔さんの手を振り払った。
痛かったのか、眉を少し寄せて顔を歪ませた翔さん。



「...訂正したらデスクの上に置いておくんで、お先にどうぞ。」

涙を思いっきり、スーツの袖で拭った。









『まだ訂正分終わってねぇーし、先帰ってくれ。』って言う言葉をひたすら期待したけど、

...期待はするもんじゃない。



「じゃあ、お先。」


あっさり、仕事よりも優子さんの方をとった。




誰もいない独りきりのオフィス。
膝を抱えて泣きじゃくった。

仕事を1通り終わらせて、満員電車に揺られて。
フラフラな熱い体をベッドに体を任せていたら、また涙が溢れて。







翌日のハンパないだるさ。
腫れた顔に、腫れた目。

あ、こりゃ、熱だと気づいた時。
一気に脱力した。



あの、頭のボーッとした感覚は熱から来ていたんだな。
二宮に宛てたメールの新規文面を、開いたまま、私の瞼はそのまま閉じていった。




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