不器用な彼に恋した私。




「カツラ無くしてしまったら元も子もねぇじゃん。」



カツラと...優子さん。
全く結びつかない。
どういう事?


電話を終えた翔さんは深いため息をついて、スーツのネクタイを緩めた。



「あの...カツラと優子さんはどんな関係性で...、えっと、翔さんと優子さんの関係は...恋人でよろしいのでしょうか?」


翔さんは、眉を寄せて険しい表情を浮かべた。
あまり触れて欲しくないことだったのかな...。。


心配になって、謝ろうとした時。



「っはぁ、もう。誰にも言うなよ。
...あの優子は、世に言うオカマだ。」



ん?
え、や。あの細さは男性のとは思えないし、胸も超豊かですが。


話についていけない...あの天使みたいな笑みが男性とは思えない...。。


「確認するか?本人に。」
「遠慮しておきます!」


「...こないだ、上司に強制的にオカマバーに連れて行かれて。
そこで受付嬢してた優子が働いていて、そこから妙に気に入られて。

おまけにオカマバーに社長も来てたんだけど気に入ったみたいで、今度の商品広告のモデルに優子を使おうって話してて。
そこで会議も共にするようになったわけ。」



翔さんによると、ある日優子さんから相談があったみたいで。
「ストーカーにつけられてる」っていうなんとも深刻な問題をどうにかしてあげるべきだと思って、日々一緒に帰っていたそう。

そんなふうに帰っているうちに仲良くなったそうで、社長に頼まれて優子さんのために色々なところに連れていってあげたそう。



...。
翔さんの優しさに傷ついていた私は酷い。








「でも、今さっきカツラを無くしたそうだ。
カツラが無かったら、今回の会議の上手くいってた話がパーになる。」

翔さん、本気であたふたしてる。
さすが、仕事人間デスネ。
カツラを無くした傷ついた乙女(?)ゴコロを慰めるよりも仕事の方ばっか考える。


仕事無くなったら、多分、翔さん生きてけないでしょ。。










あ。

「翔さん...ピリピリしてるとこ、申し訳ないんですけど。カツラ、どうぞ。。」

大学のサークルは一応これでも演劇だった。
と言っても小道具の方に回ってたからほとんど裏方。


その時に使ってたボブヘアーのカツラが何故かまだ持っていた。
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