不器用な彼に恋した私。
***

何時間か、いや3時間弱。
バーで飲んでいた私達は、お開きする事にしたのだが。
二宮が珍しくべろんべろんに酔っている。
さっきから、肩を担いで歩いてるけど、隣から、
“んがぁー”とか“やばいやばい、貯金額が高すぎてやばい。”とか。
とにかくうるさい。

ってか、貯金額が高すぎてヤバイなら奢ってよ。
・・・なんて内心で思ったり。


あー。どうしよう。
二宮の家も分かんないし。
とりあえず、私の家に運び込むか・・・。





・・・後でタクシー代を払ってもらおう。
そう思いながら、“空車”のランプを灯すたまたま止まっていたタクシーに乗り込んだ。
横では、私の頭にもたれながら、寝てる二宮。
ったく、黙ってたらかっこいいのにね。


タクシーに乗って10分か15分程した時。
自宅マンションの入り口で止まってもらったタクシー。
金額は1,050円。バスの方が安く済んだのに。

そんな内心で文句をぶつぶつ言いながら、3階にある自分の自宅へと向かう。
さすがに二宮は男なのか筋肉は微かにある。
ぷにゅっとしてる所もあるが、男らしいところもちゃんとある。
華奢な体格とは思ったけど、凄い担ぐのも大変なくらい、重い。


耳元では、スースーと規則正しい寝息の音がした。



幼いとこもあんじゃん。







玄関のドアノブの鍵穴に鍵を差込み、回す。
当たり前のように扉は開く。

ただ、扉を開きながらこの、二宮を入れるのは一苦労。
ちゃんと家の中には入れたのはこの5分後だった。


「疲れたー。。。」

こんなんなら、お酒なんて奢るんじゃなかった。
酔いにはいつもなら強いくせに、なんだよ、今日に限ってべろんべろんだ。
もしや、こやつは黒ビール初体験だったりして。


グーグー呑気に寝てる二宮をベッドに寝かせようとした。



その時・・・。
手首にがしっと子どもっぽい可愛らしい指先が在った。
息が止まった。


寝ているはずの二宮が起きてるなんて、そんなわけ。。



いや、寝ていたのは全部お芝居だったんだ。
視線の先には、怪しげな笑みを浮かべた二宮の姿。
でも、ベッドライトに照らされた頬にはほんのりピンク色。


「俺が、大人にさせてあげようか?」
「何言ってるの?二宮!私達そんな関係じゃないでしょ?
それに大人ですけど、何?」


「ホント、あんたって鈍感。」


手首を引き寄せられ、重なった唇。
薄いあの唇が触れた。
ほんのり、アルコールと煙草の香りもした。
至近距離。
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