不器用な彼に恋した私。
「んんっ・・・!?」

触れた先の唇から舌が出てきて、わずかな私の唇の隙間から入ってきた。
油断した。舌と舌が触れ合う。
部屋中、私と二宮の唇から出る水音で溢れる。

上から組み敷く、二宮の表情は色っぽくて、いつものふざけるあのおちゃらけた姿は消えてしまった。

息が、息が・・・、吸えない。。

「んん!?」

やっと唇が離れた時。
唇と唇が薄い脆い糸で繋がっていた。
その先では、真っ赤な顔した二宮が、

“そんな声だすなや。”
って耳元でささやいた。


そこから、二宮は首筋に唇を這わせると、途端痛みが生じた。

「ちょ、痛い!やめて!!」
「何?俺が大人にさせてあげてるだけじゃん。大人にしましたって言う印鑑押してるもんだよ、この痛みは。」


首筋には無数の赤い跡。
真っ赤に腫れあがって、多分1ヶ月は取れないだろうと思われる。



・・・やだ。
二宮で大人になんかなりたくない。
確かに、戦友でもあり、かけがえの無い友達だけど。


私の脳裏の奥には真っ赤な表情を浮かべた翔さんしかいないんだって。
二宮の華奢な肩を押して抵抗した。
たぶん、人生の大半の力を使い尽くすぐらい、強く。


「・・・やだ。二宮やめて。翔さんしか考えられないの!!」



そう微かだけど、呟くと服を捲り上げて胸元に唇を当てていた二宮が止まった。



「ごめんね、大人にしてくれるのは嬉しいけど、私には翔しか考えられない!!!」

同じ事を2回言った私に、さっきの色っぽい表情とは異なって、まっすぐな目で私を見つめた。



「2回言われると傷付く。」


ベッドから降りた二宮は、革鞄を持つと私の部屋から出て行った。
冷たい言葉に冷たい表情で、私を見つめてそう言った。






様子がいつもと違う。
そんな気がしたけど、そこは深く考えずにいた。
のろのろとベッドから起き上がるとそのまま私はお風呂に入った。
頭からお湯を浴びた。


浴場の鏡に映る私は、首筋や胸元に無数の真っ赤な跡がついていた。
腰が砕けそうだった。はじめての感覚で。

未完全の大人の私は、まだまだ大人になれそうに無い。



二宮が唇で触れたところは、未だ熱く、熱を持っていた。
何故か、涙が溢れた。


何故か翔さんに会いたくなかった。
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