不器用な彼に恋した私。




残業分の仕事は終わり、意外にも早く上がることが出来た私は、心底喜んでいた。
早く帰って借りを返すべく、料理は下手な私は初のお弁当作りに励もう。
そう心に決めて、スマホを握った。


こういう時はcookpad。
感謝感謝だよ。



「では!お先に失礼します!」

難しそうな表情を浮かべて、メガネをクイッと掛け直す翔さんにそう声をかけた。



忙しそう...。



「あ、お疲れ。
って、夜道一人で歩くつもり?」

「えぇ!そのつもりです!」




時刻は日付が変わろうとしている時間。
...初めてこの時間まで残業したな。


「...送る。」

翔さんは、トレンチコートを着始める。
このままでは、また借りを作ってしまう。。




「大丈夫です!
借りを作ってしまうのはなんだかもうしわけないので、大丈夫です!」

「は?借り?」


その私の意味不明な言葉に、眉を寄せて険しい表情を浮かべた翔さん。

怖い!怖い!!



ゆっくり近づいてくる翔さんを避けるように、私も1歩、2歩と後ずさり。



「拒否権は貴方にない。
早く黙って送られておけ。」


手首を捕らえられた私は、もう逃げ場はない。
大きな背中に委ねることに。



三度目の借り。
早くも借りを積み重ねてしまった。
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