食わずぎらいのそのあとに。
「やっと私が『女の子』の1人ではないってわかってきたみたいな。モテるくせに女に興味薄いとか、ほんと難物ですけどね」

「高木くんて、モテるの?」

ちょっと意外だ。あんなに愛想がなくて、どうやってモテるんだろう?

「音楽関係者の中では相当に。弾いてる姿に色気がありますからね。でも長年片思いしてる相手がいるっていう噂もあるんですよ」

そうなんだ。こないだ出会ったばかりなのにすごい情報収集力。仕事並だね。

「それ香さんかなってカマかけてみたんですけど、恋っていうわけでもないみたいですね。神聖視しているというか」

「神聖視? そんなことないと思うけど。姫ってただのあだ名だよ」

「憧れぐらいだったら、意外と全く違うタイプのほうが勝算あるかなって」

聞いてないね、私の話。追いかける恋にはまるタイプなのかな、早紀は。




私もそうだったんだけどなぁ。なんだかもう、ずっとずっと昔、別の人のことみたいだけど。

「次はいい報告する予定ですから、安心して赤ちゃん産んでくださいね」

と因果関係がよくわからない励ましの言葉を残し、テキパキと早紀は帰って行った。



高木くん、チャンスだよ。あんなにしっかり者の女の子、なかなかいないよ。

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