食わずぎらいのそのあとに。


そうか。やっとわかった。

私が何をわかってなかったか。




急に視界が開けたような気持ちで、スマホを置いて両手で髪をかきあげた。

何を弱気になってたんだろう。そう、大丈夫なんだ。私が信じなくてどうする。

タケルは絶対に大丈夫だ。何があっても絶対に向かうことができる、自分らしいところに。

奥さんが役立たずで重たくっても。仕事に注力するべき時期を今ふいにしてしまっても。



年下だから? 私よりずっとできる男だと知ってるのに、何考えてたんだろう。

若いから? そう、若いなら時間はこれからたくさんある。


でも大事なのは、そんなことじゃない。タケルは大丈夫。

だって、私がこんなに好きになった人だ。

自分を信じられなくても、タケルを信じればいいんだ。あの偉そうで短気で優しい男の未来を、まるごと。



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