食わずぎらいのそのあとに。
「俺ね、やっぱりあの話受けることにした」
リサたちが出てくるまで、車に寄りかかって待ちながらタケルが何気なく言う。
ああ、決心がついたんだ。また転機が出産に重なったから悩んでいたみたいだけど。
あまり詳しいことは聞いてないけれど、とにかくタケルのやりたいようにやって欲しいと伝えてあった。
相変わらずケンカもするけど、全部がわかりあえるわけじゃないけど。でも、ちゃんと夫婦になってきたと思う。
「見て」
返事の代わりに私が指差したのは、東の空の満月。
「みちるが喜ぶな」
「みちるが喜ぶね」
2人で同時に言って、目を見合わせて笑った。親にもなって来たね、私達。
私が見上げる月はいつだって1人。隣にいつも、いてくれる人だよ。
「だいじょうぶだよ、絶対に」
寄りかかったまま久しぶりに手をつながれて、心からの言葉をつぶやいた。
THE END