食わずぎらいのそのあとに。
「古くて狭いよ」とタケルが言っていたとおりの小さなマンションの一室で、お母さんは喜々としてアルバムやらなにやら出して来てくれた。

子供の頃のタケルはすごいかわいい。女の子みたい。二つ下の妹さんより小さいくらいに背が低く、そのくせ時々カメラを睨みつけたりして強がっている。

「かわいい!」

「言っとくけど嬉しくないから、それ」

「男の子でこんなかわいい子が生まれたらどうしよう!」


乗り気でないタケルを引っ張って、ダイニングテーブルで一緒にアルバムをめくる。

嫌がりながらも「これがリュウ」とか友達の名前を教えてくれた。本当に小さい時からつるんでる友人達なんだ。いいな、そういうの。

中学生ぐらいから急にかっこいい感じに印象が変わり、あ、これはモテるなっていう男の子になって行く。

「モテたでしょ」

「普通にね」

余裕の笑みだ。でも、今とはさすがに違う爽やかな中学生で、スポーツ少年に見える。当たり前だけどこの頃は昼間が似合う。


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