食わずぎらいのそのあとに。

「ほんとに、考えてたの?」

「そう。でも誕生日にプロポーズされた途端、予想外過ぎて別れることにしたって人相手だと、慎重にもなるよね」

ああ。前の彼。あの人は年上でバツイチで結婚には懲りたって自分で言ってたの。本当に唐突にどうしたのって感じだったの。




そうか。でも自業自得だ。私は結婚には興味がないってタケルが思っていてもおかしくない。

タケルに突然結婚しようと言われたら、何があったのかとびっくりしたとは思う。




「お父さんに言われたって言ってくれたらよかったのに」

「そう言われたから結婚しようかって言われたら嬉しい?」

「……嬉しくない」

嬉しくないけど、でも。

「一緒に考えればよかったんじゃないの?」

「そっくりそのまま返したいよな、それ」

確かに。お互い様だね、自分ばっかりで悩んでて。

「妊娠したのも言ってくれなくて、聞いたら泣かれて。泣くほど嫌とかさすがにへこむっていうか、振られるのかなこれって思った」

振られる? タケルが私に? そんなわけないでしょ、逆ならともかく。

「嬉しいとか言っても、結局妊娠が嬉しいだけで俺関係ないのかよって。子供好きだもんな、香は」

「そんなわけないよ、タケルとの子だから嬉しいって」

言いながら、私の子じゃなくて2人の子なんだって、急に意識した。愛の結晶、とかそういう恥ずかしい言葉が頭に浮かぶ。
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